賛否の齟齬

 変な時間に寝て、起きてする人間だから、おかしな時間に朝飯だか夕飯だか分からない食事を合わせて取る。
 学生の下校時間にブチ当たって、合間をぬうようにフラフラと近所のホカ弁に足を向けていた。
 ――落とし物。一瞬、お守りに見えたそれはフルネームで、おそらくは女性名が印字されていた。
 きっと下校途中の小学生かなにかが落としたのだろう。個人情報にうるさいご時世にこんなものが落ちていて、ここら辺りはまだ平和なのかと思った。
 順番待ちのいない店内で注文して、出来上がりを待っていた。ほかに客が来そうな気配もない。
 ……と、思っていたら客があった。
 ランドセルを背負った(おそらくは低学年の)女の子が三人。
 家に帰ってご飯がないのだろうか? 親が共働きの鍵っ子だとか、作るのが面倒だからついでに買いつけを命じられたとか――。
「これ」
 先陣の二人が照れ臭そうに顔を見合わせたあと、店員の女性になにか手渡していた。
「そこの道に落ちてました」
 僕が目をくれて無視した落とし物だった。
 渡された店員の女性は少し困って、
「あー、ありがとう。また、こちらでお巡りさんに渡しときますねー」
 両手で受け取っていた。
 近くに落ちていたから、とりあえず店の店員に預けたのだろう。渡された方も困る。困るっちゃ困るが無碍にも出来ない。
 目をくれて、どうでもいい「だろう」なく「どうでもいい」とガン無視くれた僕より、よく出来ている。
 注文していた品が出来たので腰を上げた。
 幼くてつたない善意より、汚い金で買ったチキン南蛮弁当の方に目が行ってしまう。
 人の不幸で飯は食えて、善行で腹は満たされない。真っ白な善意で胸をイッパイにするより、乳白色のタルタルソースに甘酢ダレをかけて早く胃に収めたい。
「そんなこと言ったらダメなんだよー」
 弁当を受け取っていて、女の子たちがなにやら揉めているようだった。
「でも……」
 一人の女の子がうつむいた。
「絶対、見つかんないもん」
 弁当を受け取りながら女の子たちを気にした。店員の女性も不思議そうに気にかけている様子だった。
「見つかるかもしれないでしょ」
「そうだよ」
 二人の女の子が先に店を出て行く。
 確かに落とし主は見つからないかもしれない。正直、そう大事なものにも思えない。
 中には現実的な子もいるのだろう。一部であっても。
「いないもん。いない人のだもん」
 言って、あとを追うように三人目の女の子は店を出た。
 弁当の入ったビニール袋をつまみながら、呆けたように小さな背中を目で追う。
 持ち主はもうこの世にいない? もしか元々人外の――。
 追いかけ、引き止めて声をかけるわけにもいかず……。
 意味は分からずとも、知っているなにかがあるのかもしれない。一部であっても。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。