少年となにか

 気、開運、法則、波動、チャネリング、パワースポット……。
 僕は、スピリチュアルな方面に関してあまり明るくない。
 ただ思うところ、宇宙からのメッセージをダイレクトに受信しているような人に限って言えば、なにか気色が違うように感じる。
 コスモパワー全開で”生”にバラ撒かれる情報は、ブリッジ(橋渡し役)ごと腫れ物扱いされることも多い。いわゆる「電波」。理解不能であること自体の恐怖――。

 最寄り駅までの道のり、家を出てすぐの曲がり角に両手側双方に民家が立ち並ぶ狭い路地がある。
 つまらない用事を抱え、なにかおもしろいことでもないか、と半ばふて腐れ気味に歩いていた。
 路地に入った直後、ラケットを持った男の子の後ろ姿が目に入った。
 少年の前にはスーツ姿の……30代前半ぐらいだろうか。男性が立っている。
 その男性もラケットを持っていたので、父と子が遊んでいるのだと思った。
 男の子はケラケラ笑っていた。楽しい――おもしろいのだろう。
 面白いというのは可笑しいコト。可笑しいとは訳が分からないコト。
 どうも様子がおかしい。
 狭い路地で熱心にラケットを振る子供がいれば、後ろから歩いて近づく僕の足取りは自然と緩やかになる。危ないから。
 二人へ迫るにつれ、子供と男性の距離がバカみたいに近いことに気づいた。
 時間は午後の2時ぐらいだったと思う。
 男の子は、ラケットを上から下に振り下ろしてはしゃがんでを繰り返している。
 素振りの練習を父親が見つめている、そう思おうにも、男の子がラケットを振り下ろす度にシャトルを拾うことにも気づいた。
 つまり、男の子は何度もシャトルを頭上に放り投げては、空振りしてを繰り返しているわけだ。
 いくらなんでも当たらなさすぎる。
 否、当たれば目の前にいる男性に少なからずシャトルは直撃する。
 そうなればこそ、近すぎる男の子と男性の距離は余計に不可解だ。
 ……わけが分からない。
 おかしな光景にそばを通りすぎるとき、横目にうかがった。男性は一点を見つめて、男の子など気にもしていないような雰囲気だった。
 男の子もまた、目の前の男性など存在しないかのように一心不乱に空振りを繰り返す。
 男の子はケラケラ笑っている。
 オモシロイはオカシイ。オカシイはワケガワカラナイ。
 どうやらこの状況は僕に理解を諦めさせ、相当な恐怖を瞬時に植えつけたらしい。
 そそり立つ鳥肌の予兆に、僕は駅を目指す歩みの速度を急ピッチに上げた。
 父と子よりは少年とその未来の姿、そうとらえた方がそのときは不思議としっくりいった。だから、僕はその感情に逆らわずにいた。
 わけが分からないことを真面目に考えすぎると、おかしくなる。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。