アンリーダブル

 駅の改札で人と待ち合わせをしていた。

 時間は夕方の5時か6時ぐらいだったと思うので、まとまった人が小さな波を作っては改札を通り抜けていく。
 迎えの車を待っているのか、改札を出てすぐに僕と同じように壁に寄りかかっている人も数人いた。
 駅のホームから何台目かの電車がすぎ去り、足早にそれぞれの目的地へ去りゆく人々の群れの中、足を止める二人組がいた。
 制服姿の女子高生が改札を通ろうとせず、向こう側で二人してなにかやっている。
(定期でも落としたのかなぁ……)
 待ち人来ず。ボンヤリとそんなことを考えていた。
 お世辞にも、華の女子高生とは言い難い二人だった。背伸びした派手さも、生意気な可愛さも、自覚のない可憐さも、健康的な無敵さも感じられない。
 ショートカットの片方が、ロングヘアーの眼鏡が持つ「なにか」を覗き込んでいるようだった。
「死んでるんじゃない?」
 急に、そんなセリフが耳に入って少し驚いた。
 すぐにアプリのなにかだろうと思い直した。時はガラケー全盛だったが、近いものはあった気がする。
「悪い遅れる」
 自分のケータイに入ったメールを確かめ、「先に行く」と返信した。
 あらかじめ買っていた切符を改札機に通して、未だ改札を出る気配のない二人組みのそばを通る。チラリと横目をやった。
「やっぱ、死んでるんだよ」
「分かんない。多分、大丈夫だと思うけど」
 ロングヘアーの手には、誰かの証明写真が握られていた。
 アイドルのブロマイド的なものでもなければ、お友達と撮ったプリクラというわけでもない。
 履歴書やパスポートに貼るあれだ。
 それを指でこするようにして、なにかしている。
「ほら、死んでるってやっぱ」
「ちょっと待って……もうちょっと」
 お呪いの類か、学校で流行っているなにかなのか――それにしても奇っ怪な……。
 熱心に二人して、なにか読み取っているとでもいうのか。
 readingというよりはunreadableだ。
 なにを思っているのか読み取れない仕草であって判読出来ない。
 まあ、そんなことを言い出せば僕がここにつづるもののほとんどがunreadableになる。
 結局どうなったのか、なにが言いたいのか判読できないうえに、退屈で読む価値のないものが大半だ。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。