家宝はここ掘れ

<全部カタついた。あのときは迷惑おかけしました>

 連絡をよこしたのは、まだ今より法律がかなり甘かった時代に闇金に手を出して漫画のような状態に陥ったモギという男。
 さる月の最低返済額だけ立て替えた経緯があった。
 誰かに泣きついたのか、どこかの窓口に相談したのか聞いたが、どれも違うと言う。

「夢見て。死んだばあちゃんに連れられて歩く夢」

 もう誰もいない、モギの祖母が住んでいた家。その庭の一角を、夢の中で祖母がしきりに指差すという。
 三日連続で続けて夢を見たものだから、藁にもすがる思いでそこまで徒歩で行ったそうだ。
 夢で示された場所――そこを掘れば埋蔵金でも出てきたというのか?
「ばあちゃんの遺品が出てきた。時計とか指輪とか……家族も知らなかったし、俺宛に手紙も入ってた」
――なんて?
「残してやれる遺産はこれだけやと……困ったら使いなさいって」
 電話越しのモギに嘘は感じられなかった。
「ばあちゃん昔、金貸しやってたらしくて。そのときの担保に取った品だから気にするな、って」
 まあ、そこまで驚くような金額にはならなくて、金・プラチナの類なら現金化は効く。
 それでもにわかには信じがたい。ただ、現金化するに時間がいるから、それまでを立て替えてくれないか? 返済期限が迫っている……なんて話にもなりかねない。
 本当は片づいていなくて、メドも立たずに裏で絵を描いているやつがいるやもしれない。
 それはよかったね、と僕は一方的に電話を切った。

 数週間後に現金書留で立て替えた金が返ってきた。そちらの方が、よっぽど奇異な話だ。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。
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