ダウジング

 実家近くに、かつて古いお屋敷があった。
 固く閉ざされた観音開きの大きな扉、敷地内を隠し持つような高い壁、銛状に先の尖った囲いとそれらに絡みつくツタ……。
 周りはあり触れた民家の中で、それは一種、異様な雰囲気を悪びれもせず晒していた。

「幽霊屋敷」
 僕らはそう呼んでいたが、別段、そこで霊的なものを見たわけではない。
 ただ、どことなく空気感でそう呼んでいただけだ。
 なぜ、あんなものがあったのか、今にして思えば不思議だ。取り壊されてしまったのが惜しい。
「あそこは、かつて戦時中の療養所だった」
「世を捨てたさる血筋の人物が住んでいた」
 そんな噂もまことしやかに耳にした。真相は未だもって分からない。近所の生き字引でさえ明るくない。
 今ほど時代が発達していたらネットで噂になって廃墟マニアに心霊スポット通に研究学生に……好事家たちの格好の餌食となっていたかもしれない。

「あまり近づくな」
 絶対的な禁忌にされた覚えはない。が、大人たちはあまりいい顔をしていなかった気のする。
 きっと得体のしれなさと、かつてその屋敷の周りに住んでいた人間が揃って気性が荒いというか、情緒不安定というか……子供を遠ざける理由は、そこら辺りだったのだろうと思う。

 大人になって、その屋敷跡がまだ更地だったころ。
 近くを通ったさい、甲高い声援が聞こえてた。
 子供たちがなにやら、キャッ、キャッ言いながらやっている。
 一人が中心になって、輪を作るようにほかの子たちが覗き込んでいた。
 妙に気になって行き先を変え、それとなしそばへと近づく。

 つまんだ糸に通した鉛のような円形のものをグルグルと回して遊んでいる。
 フーチを使ったダウジングに思えた。
 あとで調べると、ペンデュラム・ダウジングもしくはラジエスセシアと呼ばれる種類に該当する。
 僕も子供のころ、漫画に影響されて数人とダウジングで宝探しをしたことがある。まあ、なにも見つからなかったが。

「ここ、凄いね~」
 気づけば立ち止まって凝視していた。子供たちを。
 あり得もしない期待を、「あるはずのない」という実感の頼りなさにだけ支えられていた幼心ーー
 おもしろいようにグルグル回っている。円形の道具が。
「イッパイいるー」
 すぐに道具を持っている子が意図的に回していると思った。経験が割って入る大人脳ーー
 ……どうも様子が違う。
 糸をつまんでいる手も指先も動いていないのに、あれだけ規則的に激しく回転することなどあり得ない。
 なにを探しているのか?
 流行っているおもちゃにしては、どうも手作り感が高い。時代は、さすがにニンテンドーDSは発売されていた。

「次、行こ!」
 中心的な子供が走り出すと、ほかの子たちもそれを追いかけるようにしてその場から去った。
 大人は一人取り残される。
 学校でなにか教えてもらったのかもしれない。グループ研究のような課題だったのかもしれない。

 子供たちが今までいた場所へ、そっと近づく。
 なにもない。ないものはない。
 ただ、”ある”ではなく”いる”と子供たちが表現したことに引っかかる。
 あの屋敷の跡地だけにどうも結びつけて考えてしまうのは、童心の抜け切れないままこじらせた大人の悪いクセか。
 なにか……かつて、その屋敷周りに住んでいた人間が揃って気性の荒かった原因の「虫」がいたのかもしれない。
 肉眼では見えない。掴めないもの。
 まあ、今でも妖怪だ、ポケモンだは世界各地で探されている。不思議はない。

 金の成るエサを探して、金に成る餌を撒いてしているのだ。

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某
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