二号さんとおデート

 金もない。男同士でナニするわけにもいかない。
 知人のオオタニと連れ立って真夜中に徘徊……お散歩していた。
 自然と二人の足は、ニシノという共通の知人の家へと向かっていた。
 ニシノがまだ独身男の一人暮らしだったころだ。それほど気を使わなくてもよかった。
 家に上がり込んで他愛もない話を男三人でして……仕事を控えるニシノに別れを告げてオオタニと二人、再び深夜の街を歩き出した。

 しばらくブラブラ歩き、やがてオオタニの自宅にたどり着く。
 当時、僕はそこから歩いてすぐのところに住んでいたので、僕も家に帰るつもりだった。
「ちょっと待ってくれ。ついでに借りてたの返す」
 そう言ってオオタニが家に引っ込んだので、僕は家の前で待っていた。

 ……待てど暮らせどオオタニが出てこない。痺れを切らした僕は電話をかけた。
「もしもし?」
――待ってんだけど。
「ハ?」
――もういい……帰る。
 そこで妙な沈黙が流れた。

「お前、どこいんの?」
 妙ちきりんな問いかけに、僕、さん。今あなたの家の前にいるの――
「なんでおるん? 俺、名古屋やで」
 ……悪い冗談だ。腹が立ってきた。家族と同居だろうが、オオタニ家のチャイムを連打してやりたい衝動に駆られる。
 押し問答――
 もういいから、俺は名古屋だの応酬が続いて、僕はついに電話を切ってしまった。

 B型は、たまに自分を止められないときがある。血液型は関係ないかもしれないが。
 明日を待たずして、すぐにニシノへ電話をかけた。
「もしもし……?」
 眠たそうな声が呼応する。
 僕、さん! さっきあなたの家にいったよね?! オオタニくんとおおぉおぉぉーーー!!
「きたよ」
 ありがとういい夢を。
 年間一度、出すか出さないかの優しい声でニシノにオヤスミをした。チューしてあげたいぐらいだ。再度、オオタニに電話する。
――○△□◇☆ッ! スクミズフェチコラァッ!
「……誰がスク水フェチやねん。競泳や。だから、今、名古屋おるって」
 あくまで認めないつもりらしい。僕とお散歩していたことも、スク水が好きなことも。このロリコンが……っ!

   *

 オオタニが名古屋から帰ってきたその日、僕は嫌がる変態を連れてニシノの家へ赴いた。
――と、いうわけで名古屋にいたと言い張るのだよ。この変態は。
 ニシノは難しい顔をしていた。
「ホンマに名古屋におったんや」
 オオタニは、ウイロウをビニール袋から取り出し言った。そんなもの名古屋にいた証拠になるか! ……食べるけど。
「確かにきたよ、二人で」
 言って腕組みを解き、ニシノは僕とオオタニを見比べた。
 目にゴミでも入った顔したオオタニが首を傾げる。
「そんな嘘ついてなんの得があるん? お前ら”が”にしても、仮に俺”が”にしても」
 往生際の悪さに頭が下がる。これは、寿司とすき焼きをいっぺんに出してくれないと気が済まない。
 今度は、オオタニが腕を組んだ。
ニシノはどうとして……お前の言うことは信用ならん」
 貴様、自分の妹にくぁwせdrftgyふじこlp
「ああ、でもな」
 って、お前の妹にCD貸しただけで、ドツかれたこと思い出したわボケッ!
「確かに、二人できたのはきた。でも、なーんかオオタニいつもと様子が違ったな……」
 人の家で暴れていて、ニシノが口を開いた。
「なんかオオタニだけど……オオタニじゃない感じはした」

 「ドッペルゲンガー」、「コピーロボット」、「テレポーテーション」、「体外離脱」様々な単語が頭を巡る。
「正直、違和感はあった。でも、そのときは、こんなこと言うのも……なあ?」
 ニシノはうなって、それから口を閉ざした。平和主義のニシノが、場を収めるための嘘をついているようにも思えない。
「名古屋にいる俺じゃなくて、もう一人の俺が、コイツと一緒にきたってこと?」
 言って、オオタニは僕を見つめた。こっち見んな。指差すな。ヘシ折んぞ。
「お前、俺のこと愛しすぎ」
 き……気持ち悪い。気味が悪い。気色悪っ! キモッ!
 発想の源が分からない。どうやったら、そんな見解になるのか。
「ああ、でも好きすぎると、その人のトコ行くみたいだよ。生霊――あれ? ってことは……」
 ニシノの悲鳴が轟き、僕はウイロウを見つめた。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。
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