なすりつけ

 慣れない、似合わない、それしか持っていない……。
 スーツ姿で帰ってきたある日のこと。一人フリーマーケットに興じていた。
 まあ、中々お目にかからないであろう賞味期限の切れたタバコ、しわくちゃの履歴書、ラーメン屋の割引券に色褪せたガムの捨て紙、ボールペン、レシート、外れクジ、十円未満のジャリ銭……
 今時、小学生男子でも、これほどの宝物をポッケに忍ばせていることはない。
 隠し持ったガラクタをいたるところから溢れさせテーブルを埋めていたときだ。不可解なものを見つけた。
 ――四つ折りのコピー紙。

 覚えのない色々の中にあって、察しのつかないのはそれ一つだった。
 ハテ、なにか? 胸の内ポケットに収まっていたそれを広げてみると、
「定例会開催のお知らせ」
 見出しされたワープロ打ちのA4に、サテ、ナンデショウ?
 縁もゆかりもない特定非営利活動法人の名があって、しかも宛名が「常任理事各位」となっている。
 僕は、知らぬ間にここまで偉くなった覚えはない。むしろ、営利活動にのめり込んで没頭したい。
 いやさ、なぜこんなものが僕のスーツに紛れ込んでいたのか、皆目見当つかない。
 開催日程はいくばくか過ぎている。しようとする意識なく、気づけばググッていた。
 それは、それはもう文化的な……僕なんか一生ご縁なかろう団体であって、電話番号も乗っている。
 そんなもの捨ててしまえばいい。だが、裏に達筆でメモ書きされたことの気になって押し止まった。
「ハイ。こちら◯◯の◯◯ございます」
 ご丁寧が過ぎる電話の向こうさんにカクカクシカジカ説明すると、さすがに電話口から困惑の色ありありと伝わってくる。
「え……と、確かに私どもの団体が発行したものに間違いございません」
 ――裏にメモ書きがあるのですが?
「ハ……それが、そちら様のお洋服に入っていたと?」
 ――ハア、いかがいたしましょう? こちらで処分しても……
「ハイ、定例会は過ぎておりますので……メモも大したことのない内容かと思います。お手数ですがお願いできますでしょうか?」
 とりあえず、そこで電話は終えた。が、どこでどう考えても、僕のスーツの内ポケットに入り込むことはないと頭を悩ませた。
 それより――。
 メモ書きのある一文が気になった。
「チャネリングしてきた、きすぎ、マルオカに聞く」
 ほかにメモされたものは、理解できなくともおかしいと思えるようなものはない。けれど、この一文は違う。理解ができて納得におよばない。
 僕は、超世界のことについてはよく知らない。メモの持ち主が少し危ない人にも思えてきた。

   *

 後日、僕はそれを勤め先で話のネタにしていた。
「それ、まだ持ってる?」
 そう言われたので日をあらためて持っていくと、
「これは危ないよ! 呪詛的な文字の配置だし、お焚き上げした方がいい! なにか嫌な感じがする」
 ……嫌な感じがする。お前のが危ない。知り合いが、だいぶ危ない人に思えてきた。
 自称霊感ちゃんは、呪詛的な文字の配置が具体的にどういったものか答えてくれなかった。
 とりあえず、紙はファミレスのゴミ箱へ丸めて捨てた。

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某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。
某

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