お呼びか払いか

 人の会員カードを借りて、漫画喫茶でヒマを潰していた。
 トイレに立ち、用を足していると電話のコール音が店内に鳴り響いている。自分の個室からだった。
——もしもし?
 砂嵐のような音だけを立てて、電話は切れた。すぐにこちらからフロントへかけ直す。
「いえ……こちらからは、お電話しておりませんが」そう言われて、いくらかの疑いを押し込んだ。

   *

 帰り際、もう一度トイレにいるとき、また電話のコール音が鳴り響いている。そしてまたも自分の個室からだ。
 ——受話器を上げて耳を澄ませる。
 混線している……? ような音がした。
 グボッ……! と口から耐えかねて泡吹くような音が聞こえたとき、乱暴に受話器を置いて店を出た。

 泡吹く前に、自分のフルネームを受話器越しに聞いた。

The following two tabs change content below.
某

ヤレバデキルコモドキ科。口は災いの元が学べない。
某

最新記事 by 某 (全て見る)