
ナベやん。その6
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも心霊の類に好かれる性質のようだ。 怖い実体験の話題は事欠かない。 怪談・怖い話を蒐集していると...
ナベやん。その6
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも心霊の類に好かれる性質のようだ。 怖い実体験の話題は事欠かない。 怪談・怖い話を蒐集していると...
家宝はここ掘れ
<全部カタついた。あのときは迷惑おかけしました> 連絡をよこしたのは、まだ今より法律がかなり甘かった時代に闇金に手を出して漫画のような状態に陥ったモギという男。 さる月の最低返済額だけ立て...
ナベやん。その5
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも危険な出来事に巻き込まれる星の下に生まれているようだ。 怖い実体験の話題は事欠かない。 学生時...
ナベやん。その4
私の友人でナベやんという男がいる。 付き合いはもう十年以上にもなるが、彼ほど恐怖譚に恵まれている人間を私は知らない。 無論嘘はついていない。 私が怖い話を集めるよりも遥か以前の学生時代よ...
おはようオジイさん
人と待ち合わせをしていた。 タクシーの待合所とバスの停留所、公園がいっしょくたになったような駅前の広場だ。 まばらに設置されたベンチの一つに腰かけ、ぼんやりとして―― 「おはよう」 ...
ナベやん。その3
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも心霊の類に好かれる性質であり怖い実体験の話題は事欠かない。 ナベやんが自室で深夜ドラマを見ている時...
あやふやなヒト
交差点に差しかかる。 赤信号が目に入った。だから、止まった。 小学生―― 高学年ぐらいの男の子に見えた。向こうから信号を無視して小走りに横断歩道を渡ろうとしている。 車が走っている。...
ナベやん。その2。
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも心霊の類に好かれる性質のようだ。 怖い実体験の話題は事欠かない。 彼が大学生の頃だ。 一人...
ピーピーおじさん
小学生のころ、「ピーピーおじさん」と呼ばれる地元でちょっとした有名人がいた。 おじさんと言っても、もうおじいさんに近い。正体は学童擁護員で、いわゆる緑のおばさんの男バージョン。"緑のおじさん"だ...
ナベやん。その1
私の友人でナベやんという男がいる。 彼は自分では認めないが、はたから見ていると、どうにも心霊の類に好かれる性質のようだ。 怖い実体験の話題は事欠かない。 以前、彼が根津の方に住んでいた頃...
田舎の因習
「けっこう古い話だけど、婆ちゃんの地元の話」 K県の山奥にあった村。伏せて欲しいと要望があったので村の名前は裾野村としておく。 ――婆ちゃんが子供の頃に経験した話なんだけどね。 ...
まだ引っかかってる
神奈川県は相模原市。 以前はダイエーグループのスーパーがあった場所に、現在十階建てのマンションが建っている。 そのマンションの五階。 道路に面した柵に、縊死したであろう霊が『引っかか...
腸閉塞
二週間ほど腸閉塞で入院した。 「糞詰まり」などと不愉快な別名もあるがなかなかに危険な病気である。 腸閉塞は腸の一部が捩れ、消化物もガスも通さなくなり激しい腹痛を引き起こす。また 肛門の方向...
袋はイロイロ大事で謎
「みんな信じてくれないけど、私おじいちゃんに抱っこされた記憶あるんですよ」 そう話してくれたのは、同僚で主婦パートのシミズさんだった。自分が生まれる以前に既に他界していた祖父に思い出があるとい...
ダウジング
実家近くの急な坂道を上がってすぐにあったそいつは、「幽霊屋敷」と呼ばれていた。 固く閉ざされた観音開きの大きな扉、敷地内を隠し持つような高い壁、銛状に先の尖った囲いとそれらに絡みつくツタ……...
スーパージャンプ
小学生のころ、集合住宅の屋上から隣棟の屋上に跳び移るという遊びが流行ったことがある。 「スーパージャンプ」 今にして思えば、一歩間違えば死んでしまう危険行為をこう呼び、飽きもせず毎日のように行...
誰がために塩は煤ける
葬式に出なければいけなくなって、少し頭を悩ませていた。 実家住まいのときは、人の葬式から帰ってくると留守番の人間に玄関で塩をまかせてから家の中へ上がるのが我が家のルールだった。凶事を避ける一種の...
白猫は見られてた
大学時代の友人に久方ぶりに会った。彼は学生の時分より薬物の摂取しておりだいぶ性根が怪しい。今もやってるのかと質すと「やってないよ〜」と答えるがどうにも疑わしい。葉っぱ? と尋ねると笑っていた。嘲笑っ...
欲張りな結果
夜寝る前、部屋にコップ一杯の水を置いておく。 朝起きたときにコップの水が減っていれば、その部屋にはいい霊がいる。 逆にコップの水が増えて溢れていたら、悪い霊がいる。 こんな話を知人の...
不動産屋の写真を修正
「ちっちゃい会社ですから、いわば何でも屋ですよ。依頼があればサイトの構築もやりますし、商材写真の補正もやります」 米谷さんは今年三十五歳。職業は中小企業のWEBデザイナー。 私には珍しい他会社...
養護学校跡地
地名は伏す。 90年代後半の甲信越エリアにて起きていた現象。 とある県のとある街、養護学校の跡地があった。 長い塀を深夜歩くときには、こんな声が聞こえる。 声質は成人男性がふざけ...
秘匿の心得
まだ様子がおかしくて心配してもらえた歳のころ。 以前に発症した盲腸が再発しそうだというので騒がれていたら、母の実家に帰省したときに祖母が近くにある「不思議な石」に再発するかどうか聞いてやると言い...
ヤマちゃん
「どうして仲良くなったんだっけなぁ……。たぶんヤマちゃんが入学式のあとに話しかけてくれて、そこから仲良くなったんじゃないかなぁって思います。それともAちゃんを介して仲良くなったのかなぁ」 十年以上...
『高い高い』の変形型
赤川が中央線のとある駅で友人を待っている日曜日だった。 三十路だというのに、友人と合流した後は、馬券を共に買いに行く。 嫁どころか彼女すらいない。 借金はないが、蓄えもない。 仕事も...
あちら様はどちら様
平日の昼時も過ぎたころ、牛丼屋でお一人様をしていた。 心なしチラホラいる周りの客が、同じ方向を気にしているように思える。気になって注目を集める先を探ると―― 一人の客だ。女性に見えた。 ...
ばかが
歌代さんは女子大を卒業したばかりだ。就職活動がうまくいかず、今は公務員の勉強をしている。彼氏は二年前別れてからできない。浮いた話は出るのだが、肝心なところでうまくいかない。 歌代さんは子供の...
お供養催促
運転免許を取り立てのころ、練習がてら母と祖母を乗せてドライブしていた。 「伊勢街道に行こう」 母の提案を受けてよく知らない道を走った帰り、「長野トンネル」に差しかかる。 トンネルの入り口に...
サンマリンジュース
村山は七年前、チラシのポスティングのバイトをやっていた。 アルバイトの回転が速い職場だったので、一年働いた村山はベテランと呼ばれる存在になっていたという。 「だから遠くまで行かされんだ。会社は...
てっきり一流企業の旦那さんがいて、お洒落な一軒家だと……
熊岡さんは新興住宅街に夫と共に引っ越した時の話だ。 近隣に友達もおらず暇を持て余していた熊岡さんは連日喫茶店に入り浸り、読書に耽っていた。 生活も落ち着いてくると次第に喫茶店の常連とも顔見知...
おかしな家
「某さんとこお坊さんきます?」 そう聞いてきたのはコウタだった。 「僕の近所、昔からお坊さんが周ってくるんですよ。うちの近くだけかなあと思って」 托鉢にでもきてるんじゃないの? 言ったがコウ...