厄払いの風習

【ハンドルネーム】
 あか

【体験談】
 これは私が体験した13年前の節分の日の実話です。友人に話す以外初めて他の方へ話します。

 私の地元では――
 節分の日の夕方、厄年の人が年の数だけの豆をティッシュにくるみ、
 それを四つ角から後ろを向いて投げ、そのまま振り向かずに家まで帰る。
 という風習があります。
 その投げた豆は厄なので他の人でも踏んではいけません。

 私が中学二年生の時でした。
 習い事で遅くなった自転車での帰り道、暗い夜道でしたので見えなくて、誤って四つ角の豆を踏んでしまいました。
 その時は「やってしまった。嫌だな」としか思わず、寒いのもあって急いで家まで帰りました。

 夕食後コタツに入って過ごしていたのですがそのまま寝てしまいました。
 時期は二月、冬のコタツはなんと蟲惑的でしょうか。
 零時過ぎに一度親に起こされたのですが、億劫でしたので二階の自分の部屋には戻りませんでした。
 
 また一眠りして時計をみると深夜一時半。
 電気を消して再びコタツにもぐりこみました。
 今度は寝付けず、まんじりとしていました。ふと気づくと――部屋のあちこちからノック音のような、部屋がきしむような音が鳴り始めました。
 始めはあまり気にならない程度だったのですが、徐々に音は間隔が短く、大きさを増していきます。
 こたつにもぐりこみながら様子を伺っていると、横のピアノを大きく叩くするような音がしました。
 刹那、私の上を左から右の窓に向かって
 ザァーーーー!
 となにかが、明らかに、通り抜けました。

 そしてそのなにかが通りすぎた後、今度は何かがゆっくりと布を引きずりながら近づいてきました。
 周辺を少しうろちょろしたソレは、私の頭上で立ち止まりました。
 全身が粟立っていました。恐怖でいっぱいでした。
 そしてソレは――私をこたつから引きずり出そうとしだしました。
(――ひっ!)
 濡れ手で胸を触られたように悲鳴が喉元まであがってきます。
 直感がありました。
 直感は『絶対この何かに姿は見してはいけない』というもので――それは後から考えても間違っていたとは思えません。
(やだ、やだ、やだ、やだ)
 私はこたつの足に私の足をひっかけ、こたつ布団を強く握り抵抗しました。
 必死でした。

 ……少しするとその何かは諦め再びゆっくり動きだし、東側の窓の方へ消えていきました。
 消えていった後も、外が薄明かるくなるまで部屋にはノック音がそこらじゅうから聞こえていました。

 朝御飯のとき、家族に誰か一階に降りてきたか確認しても、やはりというか、誰も降りてきた人はいませんでした。

 その体験の日以降、自分の部屋で必ず寝るようにしましたが、一ヶ月くらいは夜になると部屋の中にノック音――その後私の上に何かが乗って重たい、動けないという金縛りは続きました。
 いつしか金縛りもなくなりましたが、これが私にとって一番の恐怖体験です。
 厄というのは本当にあるのかもしれません

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