
んひぃ
犬の糞害に悩んでいた葉山さんは、決まって糞をされる、家のすぐ目の前の電柱に張り紙をした。 「農薬散布中! ワンちゃん近づけないで」 それらしく見えるよう小麦粉を撒いた。 翌朝、電柱の前...
んひぃ
犬の糞害に悩んでいた葉山さんは、決まって糞をされる、家のすぐ目の前の電柱に張り紙をした。 「農薬散布中! ワンちゃん近づけないで」 それらしく見えるよう小麦粉を撒いた。 翌朝、電柱の前...
献花台
霊感の強い黒田君は事故現場にあるような献花が大の苦手だという。 ほらたまに見るじゃないすか。ちっちゃい子が轢かれて死んじゃった場所とかに。いや、お供え物する気持ちはすげーわかるんすよ。 ...
テラスから
牛山さんが秋葉原を歩いているとき、右手上空から飛んでくるものがあった。 反射的に顔を庇うと、右腕に軽い痛みが走ったという。 見ると爪楊枝がジャケットを突き破っていた。前腕に刺さっていた。 ...
心療内科で見かけた母子
祥子さんが不眠で心療内科に通っていた時のこと。 診療を終えた祥子さんは混み合う待合室で会計を待っていた。 すると隣に同じように診療が終わったのか、三十代ほどの男性とその母親らしき人が腰か...
だれにもいえない
もう二度と会わないことを条件に教えて頂いた話。 花中さんは彼女曰く「とんでもない田舎」出身だ。 北陸のとある地方。 町名はあるが、規模は「町」と名乗るにはあまりにも寂れている。 『集落...
しゅぽぽさん
コピー機の保守点検を生業とされる冨田さんが、新宿駅は京王線ホームにて耳にした声かけ事案。 それは中年男性が、保護者と思わしき老夫婦と離れた未就学児に一方的に話しかける、会話とは呼べないものだった...
駅のホームでキャンディキャンディを歌った青年
ヒロさんがホームのベンチに座り、新聞を読みながら通勤電車を待っているときだった。 「新聞読んでいたら耳に入ってきたんです。とても上手でしたねぇ。まるでアニメの声優さんのようなレベルで歌っていました...
腸閉塞
二週間ほど腸閉塞で入院した。 「糞詰まり」などと不愉快な別名もあるがなかなかに危険な病気である。 腸閉塞は腸の一部が捩れ、消化物もガスも通さなくなり激しい腹痛を引き起こす。また 肛門の方向...
『高い高い』の変形型
赤川が中央線のとある駅で友人を待っている日曜日だった。 三十路だというのに、友人と合流した後は、馬券を共に買いに行く。 嫁どころか彼女すらいない。 借金はないが、蓄えもない。 仕事も...
猫潰し
仁田さんは小学校低学年時、子猫を殺すしかなかったという。 父親より一匹につき五百円の小遣いが払われたせいだ。 ガレージに置いてあるハンマーを使用するよう言われ、仁田さんは推奨されるがまま子猫...
彼氏からライン
直実さんが最近始めた仕事の職場は彼氏が住むアパートの近くだった。 そのことを告げると彼は「俺仕事だからいないけど、昼休みとか好きな時間に使いなよ」と合鍵を渡してくれたという。 だがその頃には...
手形
高校時代、万引きが日課だった酒井さんは当時手にした窃盗品(彼曰く戦果)の大半を封も空けず実家の屋根裏に仕舞いこんでいたという。漫画やアクセサリーの類だったが到底使いきれないほどの数があったという。 ...
被害者意識
「私一個しか盗んでないんですよ?」 今年三十三歳の岩崎さんは言う。大学卒業後アパレルや受付などを経て現在は主婦業。 「それなのにあそこの奥さん、やれアレもないコレもないなんて……金額したら数千円...
ブログ 二題
愛恵さんが運営するブログはアクセスが少ない。日に一桁のアクセスも珍しくない。 ただそんな少ない読者でも、一人だけ毎度コメントしてくれる年下と思われる男性がいる。 <ついてないですねぇ。次はラッ...
誰にも知られたくない
不二井さんは三十代後半、独身。 仕事からアパートに帰宅すると、全裸になり寝転ぶ癖がある。 床には赤ん坊の写真が敷き詰められている。全て女児である。 主に産婦人科のサイトから新生児の写...
勧告
連休の前日、國松さんは飲み会でしたたかに酔い、新宿駅ホームを歩いている最中にホームから転落した。 「落下する感じに酔いが一発で醒めたよ。いやぁやっぱり落ちる瞬間に色々考えちゃうんだよなぁ」 あ...
アルタ前にて
午前零時四十九分五十六秒。 アルタ前の広場の真ん中で四十歳代らしき男が裸で体育座りをしていた。首から『好きでやってます。絶賛便器中』という紙を下げていた。 なんというか、あからさまな存在だっ...
Q&Aサイト
一年前に聞いた話であり、その間ブログにまとめるか躊躇していたものだが本人の強い希望により掲載する。 Q&Aサイトとは、利用者が質問を投稿、公開し、質問を募って疑問を解決するサービスの総称であ...
とりつかれ
高木さんの姪は、生まれつき言語に障碍がある。 小学生になっても会話のキャッチボールは成立しない。医者は先天性のものだという。 「姉ちゃん、姪のことを狐憑きだっていまだに言い張ってる。終ってるよ...
やけに集まる電車ネタ
山田さんが連日の激務をこなし、身も心も襤褸切れのように最寄り駅ホームに辿りついた晩。 女が飛び込んだ。 五分後には忘れるようなありふれた容姿だったと山田さんは語る。 だが四散した女の肉体...
トイレ
営業の外回り中、便意を感じた三浦さんは矢も盾もたまらず目に付いたホテルに飛び込んだ。 フロントにいるスタッフに断りを入れる余裕もなかった。トイレは酷い臭いがしたが構わず個室に入った。 用...
春の陽気
先週の土曜。ほがらかな陽が差す牧歌的な電車内だった。 苅谷さんがまどろんでいると、隣から男の話声が聞こえてきた。 「俺さぁ、本当にさぁ、次の震災あったらなぁ、ボランティア行くよ」 夢を語る...
狂気の中
いつも通りの飲み会だった。 気の置けない同僚と軽く一杯のつもりが職場の愚痴を言い合ってるうちに結局深酒。よくあるパターンだ。 川内さんは酔いを自覚しながら同僚と別れ、帰路についた。 午前...
リストカットするよりはマシでしょう?
黒田さんは心身のバランスが著しく崩れた時、近所の小さい墓地から卒塔婆を抜いて持ってくる癖があったそうだ。 えいやっと膝をつかって真っ二つに折る。そして燃えるゴミに出す。 「リストカットよりはマ...
ママねんね
平日十時過ぎの小田急線に、矢田君が乗っているときだった。 どこにでもいる中年サラリーマンが目の前にいたという。 混雑する電車では近くにいたくない存在ナンバーワン。 小太りで酒臭く、後退し...
DQN
二年前の話。 社会人になって三年目の飯田くんが帰省したときのことだ。 寂れていくばかりの地元に、カジュアルフレンチレストランが開店していた。東京で修業してきたシェフが働いており、味がいいとも...
夜の蝶々
「ほら昔ってエーブイ見るのにも大変だったろう? 今じゃネットでポチーでガバーの、いい時代なったよなぁ」 矢崎は以前とある街の裏ビデオショップ店員だった。 いい時代なったよなぁと繰り返し、手元の...
なんか最近よくある感じ
「秋田のなかでもとびきり辺鄙なところ」が高川さんの出身地である。 「いつからわかんないんだけど、猫の子殺しをすっごくよく見かけるようになったの。道を歩いてて『あ、にゃんこだー』って思うと、くっちゃく...
コールセンターその2
木曽さんは宅配レストラスンでのコールセンターに従事する前、別会社でのコールセンターにて働いていた。 仕事内容はインターネット関連サービスのユーザサポートだった。 福利厚生は異様なほど優遇され...
映画の割引券を二枚送ってもらった
母親から映画の割引券が二枚送ったと電話があった。 彼氏と見にいきなさい、ひいては早く結婚相手を紹介しなさい、そんな無言のプレッシャーだ。 だが割引がきく映画館は都内とはいえ微妙に遠かった。 ...