日曜日の午前中

 駅前にタワーマンションが建ち並ぶ。
 最近よく見る光景。
 小林さんが住むエリアもご多分にもれず、高層階マンションの建築ラッシュが始まっていた。

 お昼の準備にスーパーへ寄った帰り道。
 頭上から降ってくる子供達の声。
 すでにお子さんたちが独立をしている小林さんは、懐かしいような羨ましいような気分で歩いていた。
 喉元過ぎればなんとやら、子育ての大変さをそのとき完全に忘れていた、と小林さんはいう。

 子供達のはしゃぐ声。
 興奮でうわずった叫び声。
 笑い声たち。

 危なくないのかな。
 ちらりと脳裏によぎる。

 落下音。
 ――。
 耳が一瞬閉じたような静寂。
 頭上から悲鳴から降ってくると同時に、近所の家々から大勢の人が出てきた。みな不安そうな表情を浮かべ、けれど何が落ちたか確信した表情で足早に。
 小林さんのその後の記憶は曖昧だという。

「やっぱり高層階のマンションなんて建てるもんじゃないのよ。少なくとも子育て世帯は」
 まるで社会全体で実験しているようなものなのに、と小林は言う。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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