テラスから

 牛山さんが秋葉原を歩いているとき、右手上空から飛んでくるものがあった。
 反射的に顔を庇うと、右腕に軽い痛みが走ったという。
 見ると爪楊枝がジャケットを突き破っていた。前腕に刺さっていた。
 足下には爪楊枝が数本落ちていた。
(え?)
 視線を向けると、二階のテラス席に座る老婆がニタニタと嗤っていた。
 手元に握られたものは、小さくてよくわからなかったけれど、きっとガチャガチャのボウガンだろうと牛山さんは言う。
 老婆は睨みつけられると、のんびりと席を離れたという。
「なんでまぁあんな歳になってまで暗い悦びに浸るかね。俺は歳くってもああはなりたくないわ」
 以来牛山さんは都会を歩くときにはメガネを装着するようになったという。
「万が一目に当たっていたらと思うとゾッとするよ」

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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