喫茶店で聞いた話

 西荻窪の喫茶店。
 私の後ろにはスーパーの買い物袋を座席に置く、二人の主婦。
 盗み聞きするわけではなく、聞こえてきた。
「わかってもらえないのよね、あんなにご利益あるっていうのに」
「うちもそうよ」
 ご利益、という言葉が私の耳を刺激した。
「高いだの、邪魔だの、好き勝手言っちゃって」
「うんうん。うちは私の部屋があるからいいけど、なければ仏壇に置くしかないものねぇ」
「酷いのよ、こないだなんてムラコ様の――」
 続きはウェイトレスの大声な接客に掻き消されてしまった。
 私は主婦二人に近づきたい衝動をこらえ、待った。
 合間、まぁそんなことを。という言葉だけ拾えた。
「そうしたらね。旦那の指が裂けたの。縦に。真っ二つに」
「それは罰も当たるわよぉ」
「娘も同じ目に遭わないか心配でねぇ。早く拝みなさいって説得してるんだけど」
「それは心配よねぇ」
 私は二人に目を合わせないように、そっと逃げ出した。

The following two tabs change content below.

別府

管理人です。世間一般で言う、いわゆる恥知らずです。

最新記事 by 別府 (全て見る)