一昔前のインターネット

 2000年頃、インターネット黎明期の話。
 山賀君は実家に導入されたばかりのパソコンに熱中していた。
 23時を超えるとテレホーダイという定額制になるため、寝不足になることも厭わず山賀君は夜な夜なインターネットを楽しんでいたという。
 サイトからサイトへ、もうスタート地点がわからなくなるほどネットのサーフィンをしていると一つのサイトに辿り着いた。

 画像がじわじわと表示される。

 赤ん坊の生首の写真だった。
 息を呑む。
 写真の下に一文、キャプションがついていた。
「これはパンです」
 なんだ、フェイクか。と苦笑いしながら続きを見た。
 だがパンと書かれていてもあまりピンとこない、どう見てもグロ画像だった。
 後年「人体の不思議展」を鑑賞しに行った際、山賀君はこの時の画像を思い出したという。

 目の前にある画像が本物なのかフェイクなのかジャッジしようと、気持ち悪さも忘れ、山賀君はじっと画像を見つめた。
 リアリティのある肉の質感。
 皮を剥がした後に乾かは寝ている。
 思わず振り返えるが部屋せたように見えた。
 山賀君は、ふと視線を感じた。
 実家での一人部屋。両親には誰もいない。
 ――錯覚だ、深夜で神経が過敏になっているんだ。
 山賀君は自分に言い聞かす。
 蛍光灯も煌々と点っている。クローゼットもドアも、隙間なく閉まっている。
 だが、錯覚だと分かっているのだが、誰かに観察されているような気がした。
 あ。
 山賀君はパソコンに勢いよく振り向いた。 
 モニタに映る赤ん坊の生首が、嗤っていた。 
 根拠はないが、モニタの向こうにいる誰かが、今ひらいているサイトの関係者が、こちら側の行動をじっくり眺めていると思えた。
(全部俺の勘違いか? 赤ん坊は最初から嗤っていた? いやこれはあくまでも精巧に作られたパンなのか?)
 瞬間、強い風に煽られたキャンドルのようにパソコン画面はゆらゆらと揺れ、消えた。
 慌ててマウスを操作するが、反応はない。
 電源が切れ何も映し出さないモニタが、山賀君には穴蔵のような暗さに思えたという。

 翌日インターネットに接続するも、件のサイトはどうしても見つけられなかったそうだ。

The following two tabs change content below.

別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

最新記事 by 別府 (全て見る)