被害者意識

「私一個しか盗んでないんですよ?」
 今年三十三歳の岩崎さんは言う。大学卒業後アパレルや受付などを経て現在は主婦業。
「それなのにあそこの奥さん、やれアレもないコレもないなんて……金額したら数千円ですよ、あんなちっこい石。それに私正直に言ったのに……あれこれ言われるんだったら正直に言わなきゃ良かった」
 代々木の焼き鳥屋で隣り合っただけの関係の男にそう吐き出す彼女の口角は尖っていた。
「あんな奴死ねばいい。死ねばいい。死ねばいい……」
 そう思いませんか? と言う彼女に、私は微笑んだ。何を言っても無駄だと知っていた。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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