犬の散歩

 安達さんは仕事の帰り、自宅へと歩いていると大嫌いなものに出くわした。
 電信柱の脇にじっと座る、けむくじゃらの犬。
 そしてそれをぼんやり眺めるオバサンだ。
「嫌いなんですよ、犬。飼い主は可愛いだろうけど、俺にとったらネズミやカラスと変わらないです。だから毎回犬の散歩してる奴を見ると苛立ちます。もっと人がいないルートを選ぶか早朝にしろよって」
 安達さんは顔をしかめ、電信柱から必要以上に距離をおいて通り過ぎようとしたという。
「だいたいああいった畜生は嫌がる人を追いかけるんです、ほんとです」
 犬にはそんな習性があると思い込んでいる安達さんは、いつこちらに走ってきてもいいように観察しながら歩いていた。
「電信柱に小便してるんだろうなぁって……」
 けれど犬は身動き一つしない。
 目を凝らして見ると、犬ではなかった。
 マネキンの首だった。
 首輪のような鎖がしっかり巻きつけてあった。
 安達さんが呆然と飼い主(?)を見やると、オバサンは用意していたペットボトルの水をマネキンと電信柱に振り掛けた。
 そしてマネキンの首をひきずりながら歩き去ったという。
マネキンの後ろ頭には小××加奈子と張り紙されてあった。
「それからますます犬の散歩はダメになりましたね」
 安達さんは鳥肌をたたせながら呟いた。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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