アルタ前にて

 午前零時四十九分五十六秒。
 アルタ前の広場の真ん中で四十歳代らしき男が裸で体育座りをしていた。首から『好きでやってます。絶賛便器中』という紙を下げていた。
 なんというか、あからさまな存在だった。
「何してんすか?」
 私は尋ねてみた。
 男は目を伏せながら私に言った。
「いやぁ、下手こいちゃって。無視してください。新宿のお化けって思ってください」
 震えすぎて、かつ抑揚が極端すぎて、聞き取りづらい声だった。
「服、着たほうが良くないすか」
「いいんです。どうせ十一月になればみんな死ぬから」
 私は訳もわからず深くうなづいた。零時五十八分二十秒。終電まであと少し。
「地震で? ミサイル?」
「じばじば、じば」
「磁場? 地場のヤクザ?」
「じば、じば」
 私はちゃんと分かったようにうなづいた。
「どうなるんすか」
「ミナゴロシミナゴロシみな死ね死ね死ね……」
「おつかれー」私はJR総武線ホームに向かって歩き出した。
 
 家に着いて午前二時零零分零零秒。
 彼が預言者ではないと言い切れないなぁと思いながら、シャワーを浴びた。少しいい酒を呑んだ。
 残りあと一ヶ月と二日。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。