出会い厨

 辻さんは以前、交際相手から失踪されたことがある。
「まぁ俺、いわゆる色きちがいだから。とりあえずヤレそうな女いたらヤルみたいな。出会い系、クラブ、合コン、キャバクラ。何でも」
「顔なんて特にこだわんないよ。全くこだわんない。なんつーの、丙種合格ならOKって感じ」
「だから、その辺が女にバレたんだろうなぁってすぐ理解って。一緒に暮らしてたけど、紙切れ一枚『死ねクソオス』だって」
 ショックでしたか? と尋ねる私に辻さんは飄々とした表情を見せた。
「それはまぁ、別にいいんだけどさ。自業自得だもん。ただ……」
 以来異変が起きるようになった。
「女がいなくなってから、変なこと起きるんだよ。わけわかんねぇ。ナンパすんじゃん? んでホテル行くじゃん? 俺、前戯はマジメにやるタイプだから、アソコに顔埋めようとすると……」
 女性の股ぐらから蜃気楼が見えるという。
 見えるのは常に路地裏の風景なのだそうである。
 どんな女を抱こうと、見える建物の形などは寸分違うことなく同じなのである。
 既視感を感じる路地裏は夕暮れで、狭い道にひっきりなしにゴミ箱が並び、時折人の姿が視える。人の姿は中年の輩のようにも見えるが、ツノが生えており、目をみはるばかりであるという。 
 辻さんは鬼と目があってしまう前に、股ぐらから舌を切り上げる。
 蜃気楼の中の住人からは、どうも嘲笑われているような気がするという。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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