ある金曜の夜、混雑する電車で神林さんが体験したこと

 残業を終え都営新宿線の電車に乗り込む。
 空いていたドア横スペースに陣取った。
 遅れてやってきたオッサンが、乗り込むと同時に電車とホームの隙間を何度も見返す。
 じいっと。じいっと。じいっと……。
 それにつられ隙間の暗がりに目線を投げる。
 わずかな隙間から、車内を見上げる血だらけの女。千切れた両腕でしきりに昇ろうとするがそれは叶わない。
 オッサンと視線を交わせた。
 同時にため息。
 オッサンが呟く。
「どうせ飛び込み自殺したやつ。死ぬときにさんざん私たちに迷惑かけた癖して、何縋ってるんだ。だらしがないんだよ、最近の若いやつは」
 どちらがタチが悪いのか、今でもわからない。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。