トイレ

 営業の外回り中、便意を感じた三浦さんは矢も盾もたまらず目に付いたホテルに飛び込んだ。
 フロントにいるスタッフに断りを入れる余裕もなかった。トイレは酷い臭いがしたが構わず個室に入った。

 用を足しているとドアの前に気配がした。
「あぁなたのおかぁさんですぅ、あなたのおかぁさんですぅ、おかぁさんですぅ」
 女が、異常に甲高い声で同じ台詞を繰り返した。
 迷ったが結局出られなかった。そしてそのまま一時間近く出られなかった。

 三浦さんは昨秋、母を亡くしている。だがあんな恐ろしい声ではなかった、と語る。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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