誰か教えてください

 中華料理屋さんの店主より伺った、今でも謎だというお話。

 大樹さんが友人と、青梅街道を延々とドライブしていた時だ。きっと暇だったのだろう。気づけば山梨にまで進んでいた。
 当ブログでも何度か取り上げた「花魁淵」の近く、山梨県甲州市にある柳沢峠に辿り付いた。
 大樹さんは柳沢峠への道中、少し下った場所にわき道らしきものがあることに気づいていた。
 どうせ時間を持て余していた。
 ……行ってみるか。
 好奇心に任せ、一旦道を引き返す。
 友人も賛成した。

 わき道へ曲がり、進むとそこは凹凸の激しい山道。
 舗装もされておらず、生い茂る笹の葉が視界を狭める。
 波打つような道をひたすら真っ直ぐ走った。
 ただひたすらしんどかったという。
「自分たちでもさぁ、なんでこんな物好きなことをやってんだろうなぁって笑っちゃったよ」
 走っていたのは三十分ほどだろうか、ようやく開けた場所に出た。
 大樹さんはペンションが集まった村だと思えたという。
 だが人気はなく、一見してどの瀟洒な建物も廃墟だとわかった。
 火事でもあったのか、燃えた家もあった。
 焦げた匂いはまだ残っていた。

 道はまだ上へと続いていた。
 友人と頷きあうと、大樹さんは車を走らせた。
「本当に若いときって、バカやるよなぁ」
 五分ほど走った。
「そこだけ道は舗装されて、サービスエリアみたいなでっかい駐車場があって」
 一見してお金がかかっていると分かる建築物だった。
 寺院のようにも見えるが、高い塀に遮られ、全体像は見えない。
 塀のところどころが布に覆われており、それが不気味さを醸し出していたという。
 人の気配はあるかどうか、離れた距離からは分からなかったそうだ。
 大樹さんは友人と小声で話し合った。
「おいピンポンしてこいよ」
「いや、やばいっしょ」
「ピンポンしてダッシュで逃げようぜ」
「この年でかよ。いや絶対監視カメラとかあるっしょ」
 笑いあいながら、大樹さんはふと考えた。
(あの最悪な道路を使って建築材とか持ってきたのか?)
(どうしてこんな、人目を避けるような場所に建てた?)
(むしろ金持ちって奴は、家を見せつけたいもんじゃないか?)
 内部を覗けるような場所はないか、大樹さんと友人が建物に近づこうとしたその瞬間。 ――ドンッ。
 太鼓の音が鳴り響いた。
 反射的に二人は動きを止める。
 音がしたとは、つまり中に人がいるということだろう。
 しかし一体何をしているのだ。
 どうして今この瞬間太鼓が鳴ったのだ。
 壁一枚隔てた向こう側で、得体のしれない何者かがこちらを監視しているような気がして仕方がなかった、と大樹さんは言う。
 二人はそっと車まで戻り、引き返したそうだ。

 車を走らせながら、あの屋敷から国道に通ずる裏道があるのではないか。大樹さんはそう考えた。
 そうでなければ不便極まりないではないか。
 不便を耐えてまで、あそこに建てなければいけなかった理由はなんだ?

 だが峠をぐるりとまわったが、他に侵入できそうな道はなかったという。
「もう十年も前の話だから、今は違ってるかもしれないけどね。ただ俺は二度とあそこに行きたくない」

 この建築物が何だったのか。そこに至るまでの廃墟となったペンション村は何だったのか。私も調べてみたのが、すでに年月が経っているせいで、情報を拾うことができなかった。
 この記事を読まれている方で、ご存知の方がいらっしゃったら是非教えて頂きたい。

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別府

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