プール授業にて

 武内さんは中学のプール授業のとき、仲間内で深く潜る遊びに熱中していた。
 そして水中にいかに長くいられるか競争をしていたそうだ。
 その夏一番暑い日、彼は限界まで潜っていようと決めた。
 櫛の歯が欠けるように仲間たちが水面にあがっていく中、武内さんは最後まで水中にいたそうだ。
(もう限界だ)
 酸素を求めて武内さんが水面から上がったときには、プールに誰もいなかったという。
 外はすでに夕暮れだった。
 探しにきていた教師と鉢会うと、どこにいたんだとしこたま叱られたという。
「あれはなんだったんだろうなぁって今でも考えるよ。だって俺は長くたって三分くらいしか潜っていないはずなんだ。誰にも見つからないで夕方まで何時間もプールの底にいるなんて、そんなのありえないだろう?」
 武内さんは夏になるといつも考えるという。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。