折戸さんが熱心にスマートフォンをいじながら歩いていたときのことだ。
ガツン。
足に衝撃が走った。
岩のように硬い感触だった。
顔をあげた折戸さんの視界に映ったものは脇の欠けた地蔵。
さきほどまでくっついていたと思われる部分は、道の端に転がっている。
折戸さんが蹴っ飛ばしたのだ。
折戸さんが蹴飛ばし、地蔵の一部を欠けさせたのだ。
「パズドラやってたんだよ。ゲリラダンジョンがあとちょいで終わるから焦ってスマフォいじってたんだ。仕方ないだろ、時間が限られてるんだから」
彼の部屋には夜な夜な、牛の頭をした化け物が現れるようになった。
到底話の通じるような相手ではないという。
ゆえに折戸さんは今夜も漫画喫茶に泊まる。ネット難民のような生活は二ヶ月にものぼるそうだ。
だが二日前の深夜、隣のブースにて叫び声があがった。
金が倍以上かかるので躊躇していたビジネスホテルも、そろそろ視野に入れなくてはと折戸さんは仰る。