もう絶対に釣りなんて行かない

「もう絶対に釣りなんて行かない」
 合コンで知り合った男性から誘われ、千鶴さんは少女時代ぶりの釣りに出向いた。
「最初から乗り気じゃなかったのよ。何よ、最初のデートが釣りって。他にいくらでも面白いところあるじゃない」
 男性から釣竿を渡され、見よう見まねで糸を海面に垂らす。
 十分もするとグググ……と重みがかかり、魚がかかったことを知った。
 釣竿を巻きあげると海面に浮かびあがったのは『小さいおっちゃん』だった。
「ズブ濡れで禿ハゲ散らかしたタンクトップのおっちゃん」
 船のへりに両手をかけおっちゃんは千鶴さんを睨んだ。そして「さっぱりわやや」と言い残し、すうっと消えていったという。
「もうほんとなに? なんなの?」
 同行していた男性には何も見えなかったそうだ。
「それから気分悪くなって……たぶん船酔いだけど、すぐ帰って彼とはバイバイよ。あーもう」
 千鶴さんはぷりぷり怒りながらも「誰かいい男紹介してよ、ディズニー連れてってくれるような男の子」と仰っていた。
 釣りに行ったのが三年前。
 以来男運がないせいか誰とも交際できないと千鶴さんは嘆く。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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