自作PC

 飲食店でアルバイト勤務の洲崎さんが半年間みっちり教え込んだ後輩はパソコンオタクだった。
 半年間、教育係りとして面倒をみてきたが、田舎に戻らなくてはいけない事情ができたと後輩は辞めることとなった。
 仕事を辞めていく後輩が、記念にと彼が自作したパソコンを譲ってくれた。
 お金を払うという洲崎さんの申し出も断り「お世話になりましたから」とわざわざ部屋に設置までしていってくれたそうだ。
 
「長年それを使ってたんだけど、二年も使えばけっこう遅くなるじゃん?」
 かといって新品を購入するつもりはなかった。スロットという金食い虫の趣味がある洲崎さんに余裕はない。
 パソコンに詳しい友人に尋ねるとメモリの増設を勧められたという。
「メモリっての意味はわかんねーけど、なんか? 机が広くなるみたいに処理速度が速くなるとかなんとか。俺には意味さっぱりだけどよ」  
 だがその友人は、以前の後輩のように一から十までパソコンの改造を行ってくれなかった。
「そりゃあしょーがねぇんだけど。けど一度気になり始めると、どうもなぁ。使っててイライラが止まんねーんだよ」
 そこで友人が型落ちのメモリを譲ってくれたという。
 ただパソコンへの設置は自分でやれと断られたそうだ。
「ダルかったけど、ネット見りゃ色々書いてあんじゃん? 知恵袋とかで質問しまくって、
なんとなく繋げる場所とかわかったんだよ。あ、プラモデルみたいなもんだなって」
 溜まった埃を払い、ネジを外しパソコンケースをあけた。
 カラフルな線があちこちに繋がっており、洲崎さんは眩暈を覚える。
「うっわぁ……どうすっかなぁと迷ったら」
 息が止まった。
 アルミ製のパソコンケースの裏側に、びっしりと呪詛を綴られてあった。
 震えそうになる手で裏返す。
 「死」という言葉に囲まれた中心に「福」という文字がさかさまに書いてあったという。
「あれがどういった意味あるものなんか……あと、こっちのが大事なんだけど、なんで俺がそんなに怨まれてるか……全然わかんねぇよ」
 結局パソコンはその足で粗大ゴミ蒐集所に持ち込んだそうだ。
「まぁ普段はエロ動画見るくらいだから困りはしねぇんだけどよ。二年間もあれが一緒の部屋にあったって思うとすげぇ気持ちわりぃ」
 金が溜まったらメーカー製のパソコン買うことにするよ、と洲崎さんは言う。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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