有賀さんの職場の後輩が亡くなった。
病気でまだ三十代前半。
休職してからたった三ヶ月だったという。
「うち私服で仕事するんだけど、あいついっつも同じ格好しててなぁ……。」
奇天烈なカラーのチェックシャツにポケットがやけに多いハーフパンツ。なぜか草履。
センスの欠片もなかった、と有賀さんは評す。
「服の一つくらいプレゼントしてやれば良かったなぁって思うんだよ。だいたいこういうのって後で後悔するんだよなぁ」
休日。
買い物へと秋葉原に向かうと、ガード下の信号前で有賀さんは驚いた。
亡くなった後輩とまったく同じ服装をしている他人がいた。
男だった。
坊主に近い短髪で、頬にはニキビ跡がフジツボのようにびっしり張り付いていた。
「誰だお前」
二十代と思わしき男は、草履をぺたぺたと走って逃げていったという。
「何が変って、ズボンの破れぐあい―――ベルト通すとこがちぎれてるとかも一緒。チェックシャツだって醤油こぼして染みになった箇所は同じところ。どう見ても」
同じ服だったという。
意味がわからない。と有賀さんは首を振る。