軽やかな呪い

 麦田さんは独特の顔立ちをしている。
 可愛いといったわけではなく、かといって不器量というわけでもない。
 年齢は教えて頂けなかったが二十代にも三十代にも思える。
 幼い喋り方は、若さを演じているようにも聞こえる。
 
 彼女は常時マスクをしている。
 風邪をひいているわけではない。口元にキズがあるわけでもない。
 常時呟いているのだ。
 電車の中。
 職場のトイレ。
 スーパーマーケットの野菜売り場の前。
 それは今日のように平和で穏やかな日々の中で。
 中央線沿いのまるで写真家の幻想のような日曜日で。
 アルカイックスマイルを浮かべながら前を歩く誰かへ。
「お前は間違いなくキチガイになる」
「お前は間違いなくキチガイになる」
「お前は間違いなくキチガイになる」
 この軽やかな呪いが相手に聞こえないようにする為、マスクが外せないという。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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