中央線にて、立川から新宿方面に乗っている時。

 太郎君が中央線にて、立川から新宿方面に乗っている時。
 時刻は十九時前だった。

 席はちょうど埋まっており、太郎君はドア前のバーを掴みながら電車に揺られていた。
 隣に立つは大学生くらいの、かなり意地の悪い言い方だが、いかにもボンクラそうな二人の男性がいたという。ベテランのボンクラである太郎君にはそれがわかった。
 聞こえてくる話の話題は「どのAV女優が今No.1なのか」だった。議論はDVDの売り上げ、ルックス、新人かベテランか、はたまたバストの形状に及び、結論は出なさそうな雰囲気はあった。声はやや大きかった。
 紛うことなきボンクラである。
 だがよく見ると彼らの目の前の座席にいる女性も「うんうん」と楽しげに頷いていた。
 つばの広い帽子に表情の大部分は隠れているが、口元は笑みの形のままだった。
 どんな女なんだろう
 天使なのかもしれない。
 これまた下衆な好奇心で太郎君は身をかがめた。
 帽子の下は化け物だった。
 ひび割れた砂地のようなかさついた皮膚に、目玉がカメレオンのように大きかった。
 明らかにバランスが歪な瞳で、男たちを見ていた。
 その表情は、後から幾ら考えても、呪っていたように見えたという。
 向かいの窓ガラスに視線をうつすと、やはりというか、女がいるべき席には誰も座っていなかった。
 次の駅で降りる時、太郎君は振り返り、もう一度見た。
 女はこちらを見て、嗤っていた。

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別府

管理人です。ビックリしたときのリアクションは子供みたいです。

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